◇
「できた」
どれくらいの時間が経ったんだろう。
藤沢先輩から、藤沢先輩がつくりだす花たちから目が離せなくて。気づけば一瞬で、完成していた。
それは、藤の花を基調にした、華やかで煌びやかなもの。既視感がある。花の形式は違うけれど、入学式に飾られていた、私が粉々にしてしまったあの花たちだ。あまり知識はないけれど、日本史のどこかで見たことがある。今日、入学式に飾られていたのは瓶に花を挿す瓶花。今先輩が作り上げたのは、平たい器に水を引いて剣山に花を挿す盛花。
もしかして、だけど。
「……今日、私が壊した花を、再現してくれたんですか?」
「再現じゃないよ、修復」
「修復……?」
「元々、あの花達は盛花のが合うと思ってた。何もわかってない教師たちのオーダーが瓶花だったらからそうしたけど、気に入ってなかったの。だから、修復した。花が生き返った。キミのおかげだね」
カッと、頰が熱くなった。
わたし、恥ずかしい。勘違いしていた。藤沢先輩が、花を壊した私のことを相当怒っているんじゃないかって。
全然違う。全然違った。
先輩は、花を壊した私が、そのことを気に留めることがないように、わざと新しく、入学式よりも更に豪華で素敵な花を生け、一番に私に見せてくれたのだ─────。
入学式に飾られていたあの花も綺麗だったけど。確かに先輩の言うとおり、こっちの方が藤の花に似合ってる。それは、先輩のわかりにくい優しさなのかも、しれない。
目が離せない。先輩が作り出す、こんな綺麗な花の世界。



