そしてあっという間に、私の家の前に着いてしまった。
悲しいこともう、今日はもう大翔君とは喋れない。
その事実が、私の心を沈ませる。
昨日まで大翔君は私の世界に存在しなかったのに。
大翔君がいない世界。家に帰らないといけないのだ。
大翔君の顔をずっと眺めて居たかったのに。
そんなことを考えてしまったら、大翔君の腕をグイっと自分の方に引っ張ってしまった。
「どうしたんだ?」
その大翔君の言葉で現実に引き戻された。
これではいけない。大翔君に私の好きがばれてしまう。
「えへへ、少しこうやってみたかっただけ」
困った私はそう言い訳をした。
すると納得してくれたみたいで、「そっか」と言ってくれた。
ほっ、隠し通せたかな。
「じゃあ、また明日!」
笑顔で言った大翔君。それに対して私も「また明日」と、笑顔で返す。
その瞬間、私の家の前が輝いているように見えた。
そして、家から離れていく彼の背中を見ると少し寂しくなった。
「ああ、好きだな」
そう、大翔君がいなくなった道に向かって私は呟いた。



