君が嘘に消えてしまう前に



翌朝。
昨日は私が音楽室を出ていった後の石田さんのことばかり考えてしまって、あまり眠れなかったから寝不足だ。


昨日のことがあるから石田さんと顔を合わせるのが気まずいな、と思っているうちに何本か電車を見送ってしまっていて、気づいたら始業時間ギリギリにつく電車に乗っていた。


昨日のことは、やっぱり触れないほうがいいよね…。


私だったら泣いた話を人前で掘り返されたくはないし、たぶん多くの人はそうだろう。

なら、この話題は出さずに普通に過ごすほうがきっといい。


電車の中でそう結論付けて、重い足取りで教室に向かう。


――――大丈夫、なるべく、いつも通りに。


そう心の中で言い聞かせ、教室の扉を開く。



「…おはよう」



扉の近くにいた佐那にいつものようにそう声をかけた途端、一気にクラスメートたちの視線が突き刺さる。

佐那は私に「おはよう」と小さく呟くと、気まずげな視線を私に投げた。




なに、わたし、何かした?




明らかにいつもと違う雰囲気に包まれた教室。

クラス中の不審そうな視線と、気まずげな友達の表情。


...そして、教室の中心に立つ石田さんたちのグループ。



嫌な、予感がした。とてつもなく嫌な予感が。