過去夢の少女

「恵!」
咄嗟に叫んでいた。
我に返ったように自分の足がガクガクと震え始める。

私は今人を殺そうとしたのだ。
その恐怖心が這い上がってくる。

ダメだ。
こんなことしちゃいけない。

お母さんのためなら、自分が殺人鬼になろうなんて考えちゃいけないことだった。
「恵やめて!」

だけど恵は止まらなかった。
馬乗りになった状態で包丁を振り下ろしたのだ。

それは河村結夏の腹部に食い込んだ。

骨というガードが少ない場所に突き立てられた包丁は体の奥に沈み込んでいく。
「うっ……」

河村結夏が目を大きく見開いたとき、恵が包丁を引き抜いた。