過去夢の少女

しばらく無言のまま歩いていると、途中で木々が開けた場所を見つけた。
登山道からそれて、そこから山の中へと入っていく。

ここから先は正確な場所はわからない。
だけどそんなことはどうでもよかった。

私達の目的は死体探しではないのだから。
「……前にお父さんが言ってた」
不意に河村結夏が呟いた。

「昔ひどいイジメをしてしまったって。今でもきっと、自分は許されていないだろうなって」

「それで反省してるつもり?」
まるで可愛そうな過去を持つ娘のような話ぶりに苛立った。

河村浩司がどれだけ反省していようが、お母さんの胸の傷が消えなければ意味がない。
いや、消えることなんて今後絶対に有り得なかったはずだ。

それが、お母さんは自分自身で自分の過去を清算することでやってみせた。
だから……。

「あんたがいる限り、私のお母さんは過去を思い出す」
立ち止まり、振り向いた。

イジメの張本人がこの世から消えても、その娘がいる限り何度でも思い出す。
河村の娘を学校内で見かければお母さんの傷はえぐられる。

そんなこと、許さない。
恵が包丁を差し出してきた。