過去夢の少女

「とにかく、行ってみよう」
恵に言われて私は玄関前に立った。
一呼吸置いてチャイムを鳴らす。

けれど中から人が出てくる気配はなかった。
もしかしたらもう学校へ行っているかもしれない。

そうだとすればすれ違ってしまったことになる。
どうしようかと考えてもう一度チャイムを鳴らした時だった。

家の中から足音が聞こえてきて玄関が開いたのだ。
顔を出した河村結夏は私たちの姿を目にした瞬間玄関を閉めようとした。

私は咄嗟に左出しを出して玄関ドアの隙間に差し入れた。
「迎えに来てあげたんだから、開けてよ」

優しい声をかけるのは、周囲に民家があるからだ。
「やめて、帰って」

河村結夏の怯えた声が聞こえてくる。
私はドアの隙間に手を入れて引っ張った。

横から恵も手助けをしてくれる。