矢萩は、学校では殆ど人と接する事なく、いつも俯いている。
保健室の窓の傍、校舎裏の中庭の木陰で、読書する矢萩を良く見かけ
少し話すようになった。

この木陰にいるときの矢萩は、少しだけ、リラックスしているようで、

「あの…先生の前言ってた、眼鏡はずせるようにとか、心の楯とか…気になっていたんですけど、どういう意味ですか?」

いつもより流暢に話していた。

寮まで送って帰ったときの話しか…
聞こえていたんだ

「歪み直した時に、矢萩の眼鏡、度が入っていない事に気が付いたんだ。

それってきっと自分を隠すためなのかな?って

俺もそうだから…」

そう言って苦笑いしながら眼鏡をはずし、矢萩にレンズを見せた。