『凛!』思わず叫んで抱き締めに行きたい衝動をグッと堪え、いつの間にか握っていた拳に力を入れ、二人の様子を伺う。

キャップを目深に被り、サングラスをしたカイの横に白のニット帽を被った凛…
俯いていてその表情は分からなかったが、カイに腰を抱かれ寄り掛かるように歩いている姿に、胸が押し潰されそうになる

だが直ぐに凛の様子がおかしい事に気付いた。
足取りが覚束ないのだ…
まるで自分の意思ではなく、誰かに歩かされているみたいに…

「そうか、恐らく…」

そう隣にいるタクに囁いた時、カイが凛を椅子に座らせ、耳元で何かを言い、無反応の凛に微笑むと少し離れた手続きのカウンターの方へ歩いて行った。