目の前に立っている人を見て、理解するのに頭が追い付かず、固まっていると

「上がらせてもらうわね。」

ニコリと微笑むと、有無も言わさず部屋へ入って行った。

ハッと我に返り、急いで後を追うと、既にソファーに腰を下ろしていた。

「何しに来たんですか、それに家、どうして知っているんですか?
那智さん…」

スラリとした足を組んだまま、脇に置いてあった紙の手提げ袋を手に取り、健の方に差し出して

「この前のお礼に来たの。それから家なんて調べれば直ぐに分かるわ。

それにしても、結構いい所住んでるのね~、
流石セレブ校の教員だわ。」

キョロキョロ見回す那智さんに、健は、立ったまま組んだ腕を解き、髪を掻き上げ溜め息を付きながら

「お礼なんていりません。悪いけど、帰って貰えませんか…
これから人が来るんです。」

いかにも迷惑と言わんばかりの態度をとるが

「あら、随分冷たいのね、元カノに対して。

ところで人が来るって、彼女?」

那智さんは、健の態度は気にする様子もなく、窓の傍に綺麗に飾り付けされたツリーを眺めながら言った。