あなたと運命の番になる

「谷本さん、お疲れ様でした。」

蘭達の担当箇所であった部品の組み立ては定時ピッタリに終了した。
いつもなら蘭も作業着を脱いで、帰宅の準備を始めるのだが、今日はそのままの姿である。

「大黒さんは帰らないんですか?」

いつもと違う様子の蘭を不思議に思う。


「えっ・・・あっ・・はい!
まだ少しやっておきたいことがあるんです。谷本さんは帰ってくださいね。」

心は沈んでいるがバレないよう明るく言う。

和真は残業してまでやらないといけないことがあるんだろうかと疑問に思うが、まだ来てまもない自分では分からないこともあるだろうと思い、追求はしなかった。
蘭は真面目で丁寧に仕事をする人だ。この工場では珍しく信用出来るうちの1人だと感じている。
多少のことなら、1人で対応するだろう。
あまり聞かれたくなさそうな雰囲気を察し、早々と作業場を出た。