1年半が過ぎた。

瞬の働きもあり、工場の雰囲気は大きく変わった。
工場長と副工場長、主任達が定期的に意見を出し合い、話し合う。
業績も上がってきている。

「蘭ちゃん!お疲れ様ー。」

「瞬工場長お疲れ様です。」

瞬は声かけもしっかりする。瞬は明るくて、若いのでみんなから瞬工場長と呼ばれ、親しまれている。

「体調どう?」

瞬は心配した眼差しで聞く。
蘭はヒートのため、先週は休んでいた。
和真のことはなかなか忘れられずにいた。今でもヒートになると思い出す。

手紙はもらっていたが、連絡はしなかった。連絡をして、少しでも和真を思い出すとしんどくなる。どうせ会えない、叶わぬ恋ならしない方がよい。
蘭の母の所にも電話がかかってきたが、蘭が絶対に出るなと言った。

和真を感じた時のヒートはなかなか治まらなくて、大変だった。2週間ほどかかってようやく出勤できたくらいだ。
瞬から紹介してもらい、今は樹の兄の拓也ところの病院に通っている。
会社がΩの人も働きやすくという環境作りを推進しており、ヒート抑制剤を1部負担してくれることになり、高い薬にも挑戦することが出来た。拓也はゆっくり話を聞いてくれるし、薬の指示も的確だった。合う薬にであえて、最近は以前より調子がよい。

「大丈夫です!お休みいただいてすみませんでした。」

蘭は丁寧に頭を下げる。

「そんなん気にしないで!無理したらダメだからね。」

和真の想い人ということもあり、瞬は初めから気にかけていた。ただ、蘭の真面目で優しい人柄に、兄から言われたからではなく、上司として支えてやりたいと思った。実際に田中や田所の溺愛ぶりからも見て取れる。

蘭はヒートが終わって出勤すると1週間ほどは立ち仕事ではないところをあててもらっている。

できるだけ体に負担をかけず、でもうまく仕事に復帰していけるようにというはからいだ。