あなたと運命の番になる

それからも和真とは目が合うことはあるし、話しかけられることもあるが、蘭は最低限の会話しかしなかった。

「おはよう!大黒さん。」

仕事の準備をしていると、やってきた田所に声をかけられる。
田所は30代で6歳と4歳を育てるママだ。
週3回のパート勤務のため、同じチームになるまで交流がなかった。明るくて気さくなママという感じだ。

「おはようございます。」

蘭はぺこりと頭を下げる。

「ねぇ、大黒さん聞いてよ。
今日ヨーグルトの桃味とイチゴ味がそれぞれ1つずつ残っててさ、朝ごはんにだしたら、2人ともイチゴがいいって大喧嘩。取り合いになって手を出し合って、気づいたらヨーグルトが床に落下して、大号泣。
私も朝から怒鳴って大変だったー。
最悪の朝よ。」

田所はため息をはく。

「それは大変ですね。
兄弟って同じものが好きになるんですかね?」

「うーん。もともとはお兄ちゃんの方がイチゴが好きで、それを弟も真似してるって感じかな。
いつもは同じもの出すようにしてるんだけど、たまたまストックなくてー。
やっぱりダメだったか。喧嘩になったかってかんじよ。」

「弟くんはお兄ちゃんと一緒がいいんですね!
仲良くて、聞いてる分にはとても微笑ましいです!」

蘭はにこやかに話す。
自分は一人っ子だし、兄弟で取り合うという経験はない。田所の子供の話はいつも新鮮で面白く、話を聞くのが楽しい。

「大黒さんはいつもニコニコ聞いてくれるから、いつも愚痴聞いてもらっちゃてごめんね!
大黒さんと話してストレス発散!みたいな所あるから笑」

蘭にどんな子どものイタズラを言っても、決して子どものことを悪く言うことなく、笑って聞いてくれる。
一緒のチームになって蘭の優しい性格が気に入っていた。

定刻になり、田中のかけ声と共に仕事を始めた。