あなたと運命の番になる

蘭のヒートは終わった。
いつもは7日程度だが、今回は10日もかかってしまった。
少しだるい体に喝を入れて、職場に向かう。

休みすぎたので、また冷たく言われるのではないかと憂鬱になる。それに今回は体調が悪く、久しぶりに6キロほど痩せてしまった。

工場について、大きく深呼吸をする。

作業着に着替えて、持ち場に着く。

「おはよう。体調どう?」
優しめの声で話しかけてくれる。

その人は田中さんという40代の女性職員だ。
田中さんは蘭が今まで休んでても、なにか言ってくるようなことは1度もなかった。誰かと一緒にいるタイプではなく、いつもそつなく仕事をこなし、定時ですぐ帰る。
蘭にとって苦手意識が少ない人だが、話しかけられたのは初めてだ。

「大丈夫です。ありがとうございます。」

「無理せずね。あまり食べれてないでしょ。
辛かったら休憩してね。」

蘭は驚いたが、体調を気遣ってくれる優しさが嬉しかった。