あなたと運命の番になる

波が去り、蘭は落ち着いた。
ヒートを治めるのに1時間以上かかってしまった。

「お母さん、ごめんね。仕事で疲れてるのに。
もう大丈夫。ありがとう!」


蘭の弱々しい言葉を聞いて、母は抱きしめる。

「蘭!
気にしなくていいのよ。
お母さんこそ、ごめんね。蘭に辛い思いさせてる。」

蘭は母の言葉を聞いて泣き出した。
背中を優しくさすり、考えていたことを告げる。

「もう少し強い薬に挑戦してみない?
蘭に合う薬、探そうよ。
前、先生からも勧められてたのあったじゃない。」


「えっいいよ。今のままで。
今回は私の気持ちが弱いだけだし。
それに高いよ。」

「お金のことはどうとでもする。
蘭は全然弱くなんてないの。
いつも優しくて、頑張り屋さんな自慢の娘よ。
挑戦してみない?」

薬を替えても必ずしもよくなるわけじゃない。
強い薬を使って、合わなければ副作用に苦しむことにもなる。
実際、合わない薬を使って吐き気だけで、ヒートが治まらなかったこともあった。

蘭は男性の医者に自分のヒートの状態を話すことが苦手だ。そもそも男性に苦手意識がある。
なんとなく恥ずかしさもあって、思っていることをうまく伝えられない。
担当医は長く話すタイプではなく、蘭の話をくみ取って処方してくれる。
長時間、診察室に男性医師といるとしんどいので助かる気持ちもあるのだが、これでよいのかと心細くなる。

もともと第二の性の専門医は少ない。
今の担当医の診察も結構な時間待っている。

「今はいいよ。
もう少し自分でなんとかする。」

「蘭、お金のことは本当に気にしないでね。
考えてみて。」

母の言葉に蘭は小さく頷いた。