蘭は3ヶ月に1度の魔の日々がやってきた。

昨夜、前兆があり、ヒート抑制剤を飲んだ。

高校生の時よりはヒートは安定しているが、やはり波がある。


「蘭ー、身体大丈夫??しんどいよね。
お母さん今日は仕事休むよ。」

部屋でうずくまっていると母が部屋にやってきた。
母はほてっている蘭に近づいて、頭にある保冷剤をかえる。


「大丈夫だよ。慣れてるし。」

母は心配そうにするが、蘭の大丈夫だという押し切りに負けて仕事に出勤する。
蘭の家は決して裕福ではない。父を早くに亡くし、そこから母娘2人で頑張ってきた。
ヒートの度に休んでもらっていたら、生活が苦しくなる。

蘭はシーンとした部屋でひとりベッドにもぐる。
ただただ熱く、体の奥底から耐えられないほどの疼きがやってくる。



早く治まってよ・・・


心の叫びもむなしく、治まる気配はない。

「はぁ・・・はぁーふーふー・・」
深呼吸をしてできるだけ体の力を抜こうとするが、なかなか上手くいかない。

ヒート抑制剤はたくさんの種類がある。
ただ、どれもなかなか高額で色んなのを試すのは難しい。
蘭は払える値段の中で1番効果の高かったものを使っている。医者にはもう一段階強いのを勧められたが、とてもじゃないが払える金額ではなかった。

1人でいると心細くて、むなしくなる。




なんでΩなの・・。
どうしてこんなに辛いの・・。



やっぱりわがままいって、お母さんにいてもらえば良かった。


後悔するが、時すでに遅い。
蘭は進まない時計の針をみて、落胆する。

「ふぅーーは・・・ふぅー」
蘭の辛い呼吸音だけが響く。



突然、蘭の頭の中に和真が浮かぶ。
そして会いたくて仕方がなくなる。

Ωが恋をするとヒート中、その人のことばかり考えてしまうことがあるという。

蘭は初めての出来事に動揺する。



えっなんで谷本さんがでてくるの・・・
早く消えてよ・・・



蘭は頭から消そう消そうとするが本能には逆らえない。



もうなんでよ・・・


いい人だとは思ったけど、好きになっているつもりはなかった。好きになってもΩの自分と上手くいくわけなんてないのだから。

涙が零れ、呼吸が乱れる。

「はぁーはぁーははは・・。」

蘭は頭が真っ白になる。
怖くて苦しくて、何も考えられない・・・