「ただいまー。」

「蘭、おかえり。体調は?」

「大丈夫だよ。」

大黒蘭(おおぐろ らん)はヤマシロの子会社の自動車部品工場で働いている。
高校を卒業とともにこの工場に就職した。

蘭は17歳の誕生日にヒートが発現した。βである母と2人暮らしであり、蘭がΩだと知った時は2人で泣いた。それから母は優しく、蘭の体調を気遣った。
蘭はヒートがやってくる度に高校を休まないといけなくなり、Ωだと知られてからは、あまり友達も出来なかった。出席ギリギリでなんとか卒業できたが、Ωを採用してくれる職場は少なく、この工場で勤務している。

今3年目であり、ようやく仕事が板に付いてきた。ただ、ヒートで休まないといけないこともあるため、Ωは通常より減額した給料しかもらえない。それにヒートを抑える薬は高額であり、なかなか生活は厳しい。
今まで1人で育ててくれた母に楽させてあげたかったが、できない現実が蘭は悲しかった。