あなたと運命の番になる

蘭の車内での緊張を思い出し、ふっと笑顔になる。
初めは緊張しているようだったが、食事の話などをして、次第にくだけていった気がした。

蘭は控えめそうに見えて話していると表情がコロコロ変わる。大きな目をクシャッとして笑う姿はかわいいと思った。

女性を助手席に乗せている時は、高級な食事に行き、そのままホテルでやることやって帰る。その道中だ。

女性は顔がよく社長の息子であるお金持ちの‪α‬を連れて高級なディナーをしていることで自己顕示欲が満たされる。
俺も性欲が満たせればそれでいい。

そういう女性は俺の中身ではなく外面に興味がある。そんな人間と深く関わっていこうとは思わない。

そのため帰りの車内の香水の残り香はいつも嫌になる。

ただ、今日は蘭の柔軟剤の匂いが心地よく、体がなんの抵抗もなく受け入れていた。

もちろん和真が‪α‬だと蘭は知らない。知ったらおそらくもっと距離を取られるだろう。

‪α‬の人間もホルモン薬を飲むことが推奨されている。Ωの人がヒートを起こした時に、すぐに理性をとばすことなく対応出来るようにするためだ。
もちろんヒートに対する耐性といっても10分ほどであり、長い間ヒートの甘い匂いにやられると限界を迎える。

ただ、Ωがヒートを抑える薬を飲んだり、その間に救急隊員を呼ぶなど然るべき対応をとれば、対処出来るようになっている。

和真はもちろんホルモン薬を飲んでいる。‪α‬側だって理性を飛ばして、女性を襲いたくない。

たまに薬を飲んでいない‪α‬が問題を起こすことはある。どの‪α‬が薬を飲んでいるかなんて知るはずもないΩにとって一律にα‬は恐怖の対象になるだろう。