あなたと運命の番になる

蘭に仕事を教えてもらう日々は意外と楽しかった。
第一印象は控えめ。今もそれは感じている。
本当は教育係を任されて不安だったはずだ。変装した俺はさえないし、左遷してきたということは仕事も出来ないと想像したはずだ。
仕事が出来ない後輩をもつと怒られるのは教育係の蘭になる。

しかし、蘭は初めの挨拶の時から優しかった。
いくら頭脳明晰とはいえ、初めての作業はなかなかに難しく、何度かコンベアを止めてしまった。
周りの人が舌打ちしたり、冷たい目線でため息をつく中、蘭は大丈夫ですよ、初めはみんな間違えます！と嫌な顔1つせず一緒にやり直してくれた。

少しずつ出来るようになると蘭はすごいですと褒めてくれて、何か困ってることがないかと尋ねてくれた。

普段は社長の息子で‪α‬であることを周知されているので、出来て当然だと思われる。
なので悩みを聞かれることなんてほとんどない。
優しく丁寧に対応してくれる蘭に心温まることは多かった。

蘭の行動は素晴らしいのに職場でよく思われていないのが不思議だった。Ωだからと冷遇を受けている。

もちろん仕事に穴を空けてしまうと少なからず周囲に迷惑をかけてしまうのは事実だ。
だが、Ωの人間を採用している段階でそのことは分かっているはずだ。ヒートの期間も考慮した人材配置をしていない、上司の責任なのに、蘭が咎められていることは気に食わない。

Ωの人でも働きやすい環境作りか・・・

今まで考えたことはなかったが、第2の性があるこの世の中ではとても重要なことである。

今後の計画のひとつとして、考えなければならないな。