あなたと運命の番になる

1人になった車の中で和真はこれまでの出来事を振り返る。


工場で働いて10日程経つ。
正直、想像していた以上に環境がよくない。
このままじゃ工場の閉鎖も考慮しなくてはならない。
工場の規模はそこそこ大きいため、倒産になれば多くの人が職を失う。それはヤマシロにも痛手になる。
抜本的な改革が必要だ。

私語や不真面目さが目立ち、まとまりがない。
コンベアが止まっても焦ることもなければ、仕事を残して定時に帰る。
これじゃあ業績は右肩下がりだ。

工場長の態度も気に入らない。
以前、俺が社長の息子として挨拶に行った際は丁寧な対応だった。
その時も、もちろん仕事が出来るイメージはなかったが。

ただ、俺がさえない左遷できた人間だと思った瞬間、目も合うことなく適当にあしらわれ、指導はすべて蘭に任せていた。

新しく入ってきた人間に工場長が定期的に声をかけ、円滑に仕事に馴染んでいけるようにする。
ヤマシロが開く定例会議でも取り組みとして伝えてきているはずだ。

なのに全く声かけがない。蘭に俺の状態を聞いている感じも見られない。


挙句の果てに今日の蘭の残業だ。
蘭の雰囲気からするに初めてではなく、定期的にやられているのだろう。

Ωだからという意味のわからない理由で、若い女の子を1人で残業させることがまかり通る環境に腹が立つ。

今日和真が来ていなかったら、今もまだ働いていただろう。
そして残業した素振りを見せることなく翌日仕事をしていそうだ。

蘭は残業手当もらってるのだろうか。
女の子が深夜まで1人で残業している申請書類が続けば、事務が不審に思うだろう。
そんな報告がきていないということはサービス残業の可能性が高い。
今日の件は必ず手当をつけさせる。
明日工場長に直談判しにいくつもりだ。