蘭は冷静さを取り戻し、今の状況が恥ずかしくなる。
「すみません!!ご迷惑おかけしました。」
「気にしないでください。」
和真は微笑み、作業場の出口へ歩き出す。
その後ろを蘭がとぼとぼとついて行く。
「大黒さん、仕事で困ってることありませんか?
何かあれば言ってください。」
突然の問いかけに蘭は目を丸くする。
理不尽だと感じることはたくさんあるが、それが蘭にとって日常になっており、今さら困ってることと言われても難しい。
「大丈夫です!働かせてもらえてるだけありがたいですから。」
「なんでそんなに謙虚なんですか。大黒さんはもっと色々主張すべきです。」
蘭が冷遇を受けていることはここ数日だけでみてとれた。蘭は仕事は真面目でミスは少ない。悪口を言うこともない。嫌われる理由が全く分からない。
「谷本さんにも今後、ご迷惑おかけすることになると思います。申し訳ございません。」
突然謝られて、和真は驚く。
なぜこんなに自己肯定感が低いんだ。
蘭は160cmほどでスタイルがよく、目も大きく鼻筋も通った綺麗な顔立ちだ。化粧っ気は少ないので、華やかではないが、かわいらしい女性という印象だ。
ただ、常に目線が下で、何かに怯えているようにみえる。
「何言ってるんですか。迷惑だなんて思いませんよ。」
「思います!!」
「俺は思いません。」
そう言って蘭の手を握る。蘭がまた少し震えたのを感じる。
「大黒さん、私は裏切ったりしませんから。」
蘭の手を優しく撫でながら、大丈夫ですからと何度も囁く。
しばらくすると震えが止まり、蘭が口を開いた。
「私・・・Ωなんです。ヒートがあるので3ヶ月に1回1週間ほど休まないといけなくて・・。みなさんにご迷惑をおかけしていて・・・。」
和真は驚いたが、これまでの状況考えると妙に納得した。
「職場にはΩで申請してるんですよね。それなら、休暇は当然の権利です。」
「もちろんしています。昔よりは安定していますし、薬も飲んでるんですけど、なかなかヒートのタイミングが予測できなくて・・。結局当日に休暇貰わないといけないことも多いんです。みなさんにご迷惑かけてる分、働ける時に働かないといけないんです。」
「だからって、今日みたいに仕事引き受けさせられるのは違うと思います。」
和真は思ってることを素直に言う。
「私にはここで働くしかありません。Ωはなかなか採用してもらえないんです。ここをクビになったら生活できません。嫌われていることは分かってますが、もっと嫌われないように頑張るんです!」
蘭の言葉で和真は胸が痛くなる。
頑張り屋でいい人なのにΩというだけで、こんなにも辛い思いをしないといけないものか。
思わず抱きしめたくなったが、手を握っただけで、震えた彼女に軽い気持ちでしてはいけない。
ただ、1つ決めたことがある。
「大黒さん、Ωだからってなんでも我慢しないでください。もちろん体調で大変な時なんかは、私じゃ頼りにならないかもしれません。ですが、仕事で困った時は必ず言ってください。私が助けます。」
和真に意思の強い切れ長の目で真っ直ぐ見つめられ、蘭は急に恥ずかしくなり、下を向く。
なにも返せなかったが、和真の言葉が蘭の心を温かくした。
「すみません!!ご迷惑おかけしました。」
「気にしないでください。」
和真は微笑み、作業場の出口へ歩き出す。
その後ろを蘭がとぼとぼとついて行く。
「大黒さん、仕事で困ってることありませんか?
何かあれば言ってください。」
突然の問いかけに蘭は目を丸くする。
理不尽だと感じることはたくさんあるが、それが蘭にとって日常になっており、今さら困ってることと言われても難しい。
「大丈夫です!働かせてもらえてるだけありがたいですから。」
「なんでそんなに謙虚なんですか。大黒さんはもっと色々主張すべきです。」
蘭が冷遇を受けていることはここ数日だけでみてとれた。蘭は仕事は真面目でミスは少ない。悪口を言うこともない。嫌われる理由が全く分からない。
「谷本さんにも今後、ご迷惑おかけすることになると思います。申し訳ございません。」
突然謝られて、和真は驚く。
なぜこんなに自己肯定感が低いんだ。
蘭は160cmほどでスタイルがよく、目も大きく鼻筋も通った綺麗な顔立ちだ。化粧っ気は少ないので、華やかではないが、かわいらしい女性という印象だ。
ただ、常に目線が下で、何かに怯えているようにみえる。
「何言ってるんですか。迷惑だなんて思いませんよ。」
「思います!!」
「俺は思いません。」
そう言って蘭の手を握る。蘭がまた少し震えたのを感じる。
「大黒さん、私は裏切ったりしませんから。」
蘭の手を優しく撫でながら、大丈夫ですからと何度も囁く。
しばらくすると震えが止まり、蘭が口を開いた。
「私・・・Ωなんです。ヒートがあるので3ヶ月に1回1週間ほど休まないといけなくて・・。みなさんにご迷惑をおかけしていて・・・。」
和真は驚いたが、これまでの状況考えると妙に納得した。
「職場にはΩで申請してるんですよね。それなら、休暇は当然の権利です。」
「もちろんしています。昔よりは安定していますし、薬も飲んでるんですけど、なかなかヒートのタイミングが予測できなくて・・。結局当日に休暇貰わないといけないことも多いんです。みなさんにご迷惑かけてる分、働ける時に働かないといけないんです。」
「だからって、今日みたいに仕事引き受けさせられるのは違うと思います。」
和真は思ってることを素直に言う。
「私にはここで働くしかありません。Ωはなかなか採用してもらえないんです。ここをクビになったら生活できません。嫌われていることは分かってますが、もっと嫌われないように頑張るんです!」
蘭の言葉で和真は胸が痛くなる。
頑張り屋でいい人なのにΩというだけで、こんなにも辛い思いをしないといけないものか。
思わず抱きしめたくなったが、手を握っただけで、震えた彼女に軽い気持ちでしてはいけない。
ただ、1つ決めたことがある。
「大黒さん、Ωだからってなんでも我慢しないでください。もちろん体調で大変な時なんかは、私じゃ頼りにならないかもしれません。ですが、仕事で困った時は必ず言ってください。私が助けます。」
和真に意思の強い切れ長の目で真っ直ぐ見つめられ、蘭は急に恥ずかしくなり、下を向く。
なにも返せなかったが、和真の言葉が蘭の心を温かくした。


