あなたと運命の番になる

「本当にありがとうございました。助かりました。」

蘭は深くお辞儀をする。

徹夜も覚悟した蘭にとって、今日中に終われたことはとても嬉しかった。

和真が効率的にやる方法などを提案してくれて、一緒にやる。
就職してから、誰かと協力して仕事をするということがなかった蘭にとって、初めて他人とやる仕事が嫌じゃなかった。

いつもはめんどくさい仕事や、時間がかかりやすい仕事を押し付けられる。職場の人と協力なんて考えたこともなかった。

「いえいえ。こちらこそいつもお世話になってるので。大黒さん、優しく教えて下さるし、仕事は真面目で丁寧にやる方だなって思ってます!
でも、やらなくていい仕事は断った方が・・・」

和真は言葉に詰まる。

蘭の目に大粒の涙が溜まっていた。


「大黒さん?すみません、私何かしましたか?」


「あっ、すみません。・・・なんでだろ。」
目に溜まった涙が溢れてくる。手で拭うもどんどん溢れて止まらない。


「私、仕事し始めてから、優しい言葉かけていただいたの初めてで・・・嬉しくて。・・・すみません。」

蘭はこれまで職場で嫌なことがあっても1人で耐えてきた。お金のためと割り切ったつもりでいたが、やはり辛かった。今日、和真が嫌な顔することなく助けてくれて、優しい言葉をくれた。自分がこの職場に存在していることを認めてもらえた気がした。

和真はポケットに入っていたタオルを差し出す。
蘭が受けとるのを拒もうとしたが、手をとり、タオルを握らせた。

手を取った時、蘭は少し震えた。

「すみません。」

和真はあわてて手を離す。

蘭はその後もぽろぽろと涙を流す。
和真は優しい眼差しで泣き止むのを待った。