あなたと運命の番になる


疲れたーーー。
肩を回しながら、軽く手で肩を叩く。
残業になると連絡したものの、お母さんは心配して待ってくれてると思うと申し訳ない。
時計を見ると21時半だ。もう4時間ほど残業していることになる。
まだまだ山ずみに残った部品を見て、早くしようとまた気合いを入れ直す。

蘭は次々に運ばれてくる部品を丁寧に組み立てていく。



「大黒さん?」

「あっ、はい!!!」



突然声をかけられ、目を大きく見開く。
そこには帰ったはずの和真が立っていた。


本来暗いはずの作業場が明るいことを不審に思い、来てみると共に仕事を終えたはずの蘭がいた。


「なぜ、大黒さんがこの場の組み立てをしてるんですか?ここは今日私たちの持ち場じゃないですよね?」

いつも柔軟な態度の和真の少し強めの口調に怯んでしまう。

「・・・頼まれたので。」

「頼まれたからと言っても、これは大黒さんがやるべき仕事じゃないと思います。」

「・・そうですよね。なので今日は特別です!」

蘭はそう言って、気まずさを感じたまま、また作業を始める。コンベアの音がギーギーと響く。


「私も手伝います。」
蘭の隣に立ち、手を動かし始めた。


「それはだめです。私が引き受けた仕事なので、私が1人でやります。谷本さんは、帰ってください。」

「帰りませんよ。毎日教えてくれてる大黒さんが残業してるのに、残して帰れません。」

「いや・・・でも・・。」

「2人でやった方が早くないですか?
それとも俺じゃあ役立たずだから、帰ってって言ってるんですか?」

「そんなことはないです!谷本さんはまだ来て、少しなのに凄くお仕事出来るなと思ってます!」

「そうですか!お褒め頂き光栄です!ではここにいていいですよね!一緒に頑張りましょう!」

和真はしってやったとニヤリとした表情をする。
そこには先ほど感じた威圧感のようなものはない。

正直もう1人でこなすのがなかなかしんどくなってきていた。引き受けた時に想像した以上に仕事が残っていたのだ。
このままじゃ、朝日が見えるまで働くことになりそうだ。
猫の手も借りたいというような状況で、和真の助けはかなりありがたい。


「すみません。ありがとうございます。」

「2人でさっさと終わらせましょう!」

黙々と組み立てていく。
1人の時より分担できるので、仕事がさくさくと進む。なんとか今日中に終わらせることが出来た。