「――……っ!」
大人に気をとられて、自分が落ちていることを忘れていた。
大人への恐怖。落ちていく恐怖――今だけ全て呑み込んで、顔と口に、力を入れる。
「王史郎、助けて!」
言うやいなや。
目の前で、青い光がはじけ飛ぶ。
直後に姿を現したのは、王史郎。
落ちゆく私を、しっかりと抱き留めた。
学校に行く時間だというのに、行くつもりはなかったみたい。着ているのは制服ではなく、私服。白のタートルネックに、黒いロングコート。
出会った時に着ていた物だ。
少し前のことに思えて、懐かしい。
いや〝少し前〟というより。
私たちは、もうずっと前から――
「さゆ、コイツは俺らの敵だ。ぼけっとしてると、やられるぞ」
「え、えぇ?敵!?」
だろうとは思っていたけど、断言されると、より緊張感が増す。
まだモヤのかかる寝ぼけた頭に、「しゃんとしろ」と王史郎がノックした。
「今までのソレとはワケが違うからな。今、イオも下で準備してる。でもコイツとイオを会わせたくない――アイツが来る前に、やっつけるぞ!」



