「……アオイシ」
口角が上がったまま、ギリッと奥歯を鳴らす。王史郎は、その人を「イオ」と呼んだ。
「もうさゆを見つけたのか、さすが早いな」
「一番乗りでシルシをつけたアンタに言われたくないね。いつもながら嗅覚の鋭さに反吐が出るよ」
「そりゃどうも」
私と話す時と変わらない涼しい顔で、王史郎は喋っていた。だけど彼を後ろから見ると、首筋に光るものがある。あれは、汗?
まさか王史郎、私の声を聞いて走ってきてくれたの?……走った、にしては「助けて」って叫んでから現れるまで、一瞬だったけど。
「イオ、お前が赤い宝石を狙うのは、騎士団だから?それとも――」
「ん?」
「……いや」
私をチラリと見た後。王史郎は、言葉の続きを喉の奥にしまった。
何をいいかけたんだろう?
中途半端に聞いちゃったから、気になるよ……。
だけど男――イオくんは「前者だよ」と答える。
「赤い宝石があれば、アオイシを倒せるかもしれないでしょ。俺には、力が必要なんだ」
「ふん、お前に扱えるシロモノじゃねーよ。いい子は家に帰って、さっさと寝とけよ」
「!」
カッと、男――イオの目が開かれる。
髪が逆立って、空へ向きそうだ。
とりまきの私は「あわわ」と腰が引け、逃げる気マンマン。こんな場所にいたら、きっと命がいくつあっても足りないよ!



