人形にされた伯爵令嬢~時を紡ぐ愛と家族~

「そう、マニフィカ公爵様は新たに迎い入れた魔術師と結婚して、竜の大移動をと止めたの」
「っ! そう、ですよね。ユベールがいるのだから、考えればすぐに分かることでした。ヴィクトル様が別の方と結婚していたことなど」
「リゼット……」
「大丈夫です。だって今はヴィクトル様がいないんですから、嘆いていても仕方のないことではありませんか」

 そうユベールに笑ってみせたが、やっぱり上手く笑えていなかったらしい。困った表情を返された。

 ヴィクトル様は謂わば、初恋の相手。ずっと、幼き頃から慕って、憧れていた方だったのだから。そうやすやすと割り切れるものではなかった。
 けれど、私がその場にいたとしても、ヴィクトル様の役には立てないのだから、どの道、結末は変わらないだろう。
 他に優秀な魔術師と協力するのが、マニフィカ公爵家のためであり、国のためになるのだから。

 私ではダメ。ダメなのだ。