双子の妹に幼馴染である婚約者を奪われたので、次期国王とされている殿方と結婚いたします。

その日は心なしか、いつもよりよく眠れた気がした。



「リア様、お目覚めですか」

「ええ。おはよう、ジャスパー」

「おはようございます。よく眠られたようでなによりです」

「久しぶりによく眠れたわ。」



ジャスパーが朝食を持ってきてくれ、一緒に食事をした。


「馬車が到着いたしました。リア様、参りましょう。」



ジャスパーの手を取り、立ち上がる。


そこそこの貴族の娘が着ていそうなドレス、髪は昨日のまま。



「荷物は貨物馬車の方に積んであります。」

「そう、ありがとう。」


「リア。向こうでは体に気を付けるのよ。」

「何かあったらすぐに言うんだぞ。」

「さみしいわ、お姉さま…。時折お手紙を送ってくださいね」



思ってもないことをまぁこうつらつらと言えるわね。



目の前にいるのはシャルディアの国王騎士ですものね。



「リア・ヘインズ様でいらっしゃいますか。」

「はい。私がリア・ヘインズでございます。」

「そちらは…」

「私の従者で執事と護衛を兼任しております。ジャスパーでございます。」

「かしこまりました。では、こちらにどうぞ。」

「リア様段差がございます、お手を」

「ありがとう。
お父様、お母様、ロア。今までお世話になりました。」


馬車に乗る前に後ろを振り向き、お辞儀をした。


何か言いたげだった家族だった人たちの顔を見ず、馬車へ乗った。



「出せ!」




「ジャスパー。あの人たちから手紙が来たらすぐに私に渡すように」

「かしこまりました。セルディアとの交流はどうされますか。」

「当面凍結でいいわ。あの人たちがどう説明するのか楽しみだわ。」

「かしこまりました。根回しの方はこちらでしておきます。」

「向こうに付いたら書面を書くわ。それを送りましょう。」

「かしこまりました。」




そこから1日と半日ほどたっただろうか、少しスピードが緩やかになった。


「リア様。そろそろ着くそうですよ。」

「ん…わかった。」

「お腹すいてたりしませんか?」

「大丈夫よ。飲み物だけいただける?」

「こちらになります。」

「ありがとう。ジャスパー、頭巾を。」

「かしこまりました。」




馬車が停まった。


「到着いたしました。」

「リア様。」

「ええ。」


頭巾をかぶり、馬車の扉がひらく。



目の前に広がる光景に思わず息をのんだ。


「リア様。お待ちしておりました。
私は、執事長をしております。ゼウスと申します。」

「リア・ヘインズにございます。」

「まず、国王陛下に謁見いたしますので。
ご案内いたします。頭巾をかぶっている理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「申し訳ございません。陛下の前では頭巾は外しますので、今はこのままでもよろしいでしょうか。」

「かしこまりました。」

「ジャスパー。用意した書面を。」

「はい。執事兼護衛のジャスパーでございます。
こちらを。」


この書面には私の髪色についての詳細が書かれている。

私の髪色は不思議だ。


北方にある魔法使いの国、アネア王国という国の魔法使いに生まれる髪色だということ。

私はなぜか生まれつきアネアの髪色だということ。