せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。

「わかりました。そういうことなら、私もそんなイルドラ殿下を支えてみせます」

 言葉を発しながら、私はイルドラ殿下との距離を少し詰めた。
 彼の判断が、本当に正しいかどうかはわからない。だが彼がそう決めたというなら、私はそれを支えたいと思う。それが私達の関係性だから。

「さてと、そろそろ堅苦しい話はやめにするか。せっかく二人で過ごせる時間だからな」
「まあ、お互いに色々と頑張らなければならないことはありますが、今はそれを忘れましょうか?」
「ああ、しっかり休んで。また頑張るとしよう。もちろん、二人で手を取り合って」

 私とイルドラ殿下は、笑い合っていた。
 いつだったか、イルドラ殿下は助けた対価は笑顔でいいと冗談めかして言っていた。
 その冗談を、今はお互いに本気で言える気がする。こうしていつまでも二人で笑い合って、ともに進んでいきたいものだ。そう思って私は、また笑うのだった。


END