お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

挙句の果てには、佐藤敏夫の美愛ちゃんに対する暴言。


「今時の若い女性は恥を知らないようですね。この写真もその一例でしょう? 実際、男と一緒にスーパーで買い物をしている写真もある。どこの馬の骨かもわからない一般人の娘よりも、うちの麻茉の方がずっと役に立ちますよ。何せ、私は三光銀行ミッドタウン支店の支店長ですからね。家柄も良いですし」


俺の怒りは頂点に達していた。インカムで圭介叔父さんとジョセフさんが、こちらに向かっていると聞いた。


「失礼ですが、麻茉さんが我が社に在籍しているのは、彼女がコネ入社であるためですよ。しかし、私たちもボランティアをしているわけではありませんからね。麻茉さんのように、役に立たない社員は今後切り捨てる方針です。率直に申し上げますが、あなたの娘である麻茉さんには何の利用価値もありませんよ。我が社にとっては、悪影響しかありません。先ほど、私の秘書である花村さんに対して誹謗中傷がありました。訂正してください。花村さんは、きちんと面接を経て入社しました。秘書スキルや語学能力において、花村さんに勝る人はいません。麻茉さんは、彼女の足元にも及びませんね。雲泥の差ですよ。ああ、言い忘れましたが、私は家柄で人を好きになったり、結婚したりすることはありません。西蓮寺家を軽んじていただいては困ります。ちなみに、その写真に写っている男性は私ですよ。私たちは一緒に住んでいますから。花村さんには、私の公私ともに支えてもらっています」


一気に捲し立てた後、会議室のドアがノックされ、叔父さんたちが入室してきて俺たちの隣に腰掛ける。


「久しぶりですね、佐藤さん。こちらは先ほどあなたが誹謗中傷された娘さんの親御さんです」


叔父さんが佐藤にジョセフさんを紹介した。叔父さんはニッコリと笑顔を見せているが、これは怒ってる。


「はじめまして。私はHope Medical Japanの代表取締役で、どこの馬の骨かもわからない一般人の娘の父親、ジョセフ・ヴィッテルスバッハです」


あーあ、佐藤敏夫、あんたつんだな。ジョセフさんは、愛娘を溺愛していることで有名なのに。だから、言葉には気をつけるべきなんだよ、あんたたち親子は! しかし、ジョセフさんの静かな怒りには、迫力があるな。ほらほら、カッパおやじはどうする?

不謹慎かもしれないが、俺はこの状況を少し楽しんでいる。ふと大和と目が合ったが、あいつも同じことを考えていたらしく、片方の口角だけを上げてニヤリと笑っていた。