お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

突然、昨日のように胃が冷たく不快になり、思わず両手でみぞおちを押さえ、眉間にしわを寄せて目を閉じ、うつむいてしまった。

彼は優しく私の頭を撫でてくれ、私に深呼吸を促してくれる。

落ち着きを取り戻し、泣きたい気持ちを抑えながら、再び話を始めた。


「あ、あのね、あんな風に雅さんに詰問されて、とても悲しかった。​何もしていないのに、私が悪いと思わされて。二度とあんな雅さんに接したくないから、引越しや会社を辞めることも考えてる……すごく傷ついた。それに、被害者である私が知らないところで全てが決められたのも嫌だった。みんなが私のためを思ってのことだと理解している。でも私のことなのに、誰も私がどう思っているのか、決定する前に聞いてくれない。何だか自分がどうでもいいように扱われている気がして、いてもいなくてもどうでもいい存在のように……」


話が終わる前に、彼に抱きしめられた。


「本当にごめん、ごめん。美愛ちゃんはどうでもいい存在なんかじゃないよ。ただ、みんなはこれ以上君を傷つけたくなかったんだ。俺のことを信用していないかもしれない。でも、伝えたいこと、伝えなければならないことがあるんだ。初めからすべて話すから、長くなるけれど、聞いてくれるかな?」


心配そうに見つめる彼に、私は静かにうなずく。



雅さんは旧華族の家柄で、愛情深い家族や仲間のこと、初めての彼女が自分をブランド品としてしか見ていなかったこと、甘党であることを否定されたこと、高校1年生の時に進路に迷っていたことを順に話してくれた。


「高校1年生の時、帰宅途中に迷子の女の子に出会った。面倒だと思い、関わらないようにしようと考えたんだ。でもその子と目が合った瞬間、守ってあげたいという気持ちが湧いてきた。彼女はとても美しい子で、おそらく5、6歳くらいだったと思う。とてもきれいな目をしていてね。俺にはその子が、まるで天使や妖精のように見えた。その子は全然泣き止まなくてね。」


優しい目で微笑む雅さん。話を聞いているうちに、あの日の出来事が自分の中で重なっていく。

でもまだ確信が持てない私は、さらに彼の話を聞くことにした。


「その子はお菓子が好きだと言っていたので、カバンの中からフランスのキャラメルをあげたんだ。Meuhのキャラメル」

「う、うそ」


大きく見開いた目で息を飲み込む私に、彼は話を続ける。