お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

大和の家、烏丸家も旧華族だが、なぜか西園寺家に尽くしており、代々副社長に就いている。大和の兄の悠士も、いずれ副社長に就任する予定らしい。

しかし、俺だけは何も決まっていなかった。

伊乃国屋の社長になりたいとは思っていない。

だから、大和に正直な気持ちを伝えることにした。


「大和」


自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。


「お前は、自分が好きなことをすればいいよ」

「僕は雅と仕事がしたい。それだけだよ」


にっこりと歯を見せて笑う大和。


「僕はかなり有能だよ。烏丸だからね。情報網も、人を見る目も、役に立つ」


軽く言っているが、その言葉に嘘はない。


「まだ時間がある。ゆっくり考えればいい」


幼い頃から兄弟のように育った大和は、家族の一員として何でも話せる存在だ。

元カノのことも、あいつがいなければ知らずに終わっていたかもしれない。

兄の京も、悩んでいる俺にアドバイスをくれた。


「何をしたいか分からないなら、まずは自分の好きなことを挙げてみたらどうだ?」




--そんな中で、あの出来事が起こった。

『ミャーね、お菓子が好き。だから食べると嬉しくて笑うの。みんなにも笑ってほしいから』

その言葉が、腹の奥にストンと落ちた。忘れようとしていたものが、堰を切ったように溢れ出す。

だから伊乃国屋では扱っていない、お菓子専門の輸入会社を立ち上げを思いついた。いずれは、そのお菓子に合うコーヒーや紅茶、ハーブティーを揃えたカフェも。

大和は大喜びで「一緒にやる」と言い、家族も反対はしなかった。

慶智大学を卒業後、父の会社で5年働く。そして27歳で、輸入菓子の会社『BON BON』を立ち上げた。




--気づけば、ここまで来ていた。

俺のお姫様は今、いくつになったのだろう?

お菓子屋を、まだやりたいと思っているだろうか?

もしかしたら、パティシエになっているかもしれない。

俺との約束を、今でも覚えているだろうか?