お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹 美愛と雅の物語

それにしても、雅さんは昨日の夜から私に対して、とても甘い。

なぜ？
　
それに父さまからのLIMEメッセージ……
『佐藤茉麻に対する誹謗中傷の件について、伊集院涼介先生に法的措置をお願いする。警察にも被害届を提出する』って。

なんだかモヤモヤするな。
被害者である私が知らないところで、すべてが決まってしまう。みんなはきっと、私のことを思って行動してくれているのだろう。

でも、どうして私の気持ちや意見を聞いてくれないの？
私がそんなに頼りなくて、どうでもいい存在だと思われているのかな？

いつものクセで悪い方に考えてしまう。


「あ、あの、社長秘書の花村美愛さんですか？」


突然声をかけられ、その方向へ振り向くと、私と同じくらいの年齢の小柄で可愛らしい女性が立っていた。

えっ、誰だろう？
とりあえず返事をしないといけないね。


「はい」


彼女は一礼し、緊張した面持ちで話し始めた。


「突然で驚かれたことと思います。私は伊集院法律総合事務所で秘書を務めている伊集院鈴音です。昨日、私の主人、伊集院涼介の指示により、あなたにとても不快で苦痛な思いをさせてしまいました。本当に申し訳ありません。」


彼女はそう言って、深々と頭を下げた。


「え、えっと……まず頭を上げてください。昨日って？」


涼介先生とは昨日会っていないのに、どういうことか？


「昨日、主人が雅さんに指示を出して、被害者であるあなたに詰問することに。本当にごめんなさい」


今にも泣き出しそうな鈴音さん。


「そうだったんですか。私、あの詰問の後、この件について何も聞かされていなくて。でも、鈴音さんのせいじゃないから、もう謝らないでね」


立ったままの彼女に、私の隣に座るよう手で促す。座った鈴音さんが話を続ける。