お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

電話を終えた美愛ちゃんは、6時前にお姉さんが来社できるといった。

俺はお礼を言い、その後謝罪しようとしたが、彼女は一礼をして社長室から逃げるように去っていた。

入れ替わるようにして、鬼のような形相をした大和が社長室に入ってくる。


「雅、お前は何をしたんだ! 美愛ちゃんが泣きながらトイレに駆け込んだぞ‼︎」


ああ、やはりずっと泣くのを我慢していたんだ。彼女を泣かせるほど俺は傷つけてしまったのだ。


ただ椅子の背もたれに寄りかかり、ぐったりと天井を見上げることしかできなかった。

総務部での聞き込みを終えた美奈子さんが戻り、二人に何があったのかを説明するが、彼らの反応は言うまでもない。

彼らが俺に対して怒っていることは明白だ。
美奈子さんは急いで部屋を出て行った。


「お前も涼介も、他に方法があったはずだじゃないか!」


俺の前に大和がドサッと座り込んだ。


「とにかく早く佐藤麻茉の件を終わらせたかった。だから涼介を待たずに、俺が詰問役を引き受けた」


俺は椅子に前屈みになって座り直した。


「お前は一体何をしたんだ! 考えればわかることだろう。」

「美愛ちゃんを傷つけたことも理解してる。でも、誰にもあの子を泣かせたくなかった。いくら涼介でも、それは嫌だった。たとえそれによってあの子が俺のことを嫌ってしまっても、他の男にあの子の泣き顔を見られるのが、耐え難く嫌だった」


抑えていた気持ちが溢れ出し、一気にまくし立てた。


「はぁ〜、お前、ようやく美愛ちゃんに対する気持ちを認めたな。僕がなぜ美愛ちゃんを即決で採用したのか、お前にはわかるか?」


えっ、それは今関係があるのか? そう思いつつ、大和の言うことを聞く。


「もちろん、美愛ちゃんの語学力と秘書としての能力は大きかったが、あの子がずっとお前が探していた子だとわかったからだよ。お前もなんとなく感じていたんだろう?」