お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「ミャーも大好き。あのね、大きくなったら、お兄ちゃんとミャーはお菓子屋さんするの。それでね、お兄ちゃんは父さまで、ミャーは母さまになるの。約束ね!」

「どうしてお菓子屋さんになりたいの?」

「ミャーね、お菓子が好きだから、食べると嬉しくて笑うの。みんなにも笑ってほしいから」

「……そうか……うん、そうだよね。僕もお菓子屋さんになるよ、一緒に」


その時、彼女の名前を叫びながら走り寄ってくる人々が警察官と一緒に見えた。





特に何かが上手くいかなかったり、迷いがあるとき、俺はいつもこの夢を見る。夢と言っても俺が高校一年生の秋に迷子の女の子を助けたこと。

彼女の家族から感謝されたものの、実は俺の方があの時の彼女に救われた。

今でも彼女の美しい瞳、夕日に照らされて輝く髪、透き通るような白い肌を持つ、まるで天使や妖精のような女の子のことを覚えている。

あの時の彼女の笑顔に癒され、彼女の言葉によって将来の目標や夢を持つことができ、前に進むことができた。





俺、西園寺雅(さいおんじ・みやび)、32歳。旧華族の家に三兄姉の末っ子として生まれた。

旧華族と言っても、祖父の代から『リベラル派』としての立場を持ち、依然として古い伝統に縛られている『保守派』とは異なる。

祖父は町の食堂の娘に一目惚れし、結婚に大反対していた曽祖父に絶縁を宣言したそうだ。結局、曽祖父が折れ、その娘、つまり俺の祖母と結婚し、戦後に輸入食品の会社「伊乃国屋コーポレーション」を設立した。

祖父の後を継いだ父は、伊乃国屋コーポレーションを高級輸入食品を扱う会社とし、現在、社長の兄である(きょう)が国内外からの高級食品・食材を取り扱い始め、全国に高級スーパー伊乃国屋も展開している。

父は伊乃国屋の営業部で働いていた母と結婚し、三人の子供に恵まれる。

ちなみに、父は以前からの夢を実現し、社長の座を兄に譲り、今ではミッドタウン裏通りにある商店街で、母と共に昔ながらの喫茶店「喫茶BON」を仲良く営んでいる。