お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹 美愛と雅の物語

電話を終えた雅は、深いため息をつく。美愛の向かい側に前かがみで腰をかけ、しばらくうつむいて足元を見つめていた。

やがて何かを決心したかのように、ゆっくりと上体を起こし、頭を上げてケータイの録音機能をオンにし、美愛を見つめて話を始める。


「これから質問することに対して、正直に答えてください。花村さん、あなたはここに記載されているブランド品を着用していますか？　もしそうであれば、どのようにして入手しましたか？」


何が起こっているのか理解できない美愛は、不安な気持ちを抑えようと左手で服の上から赤いベルと牛のチャームに触れる。

雅の声と表情は、今までに聞いたことも見たこともないほど冷たく、まるで別人のようだった。


「ク、Cool Beautyは私の姉の会社で、彼女が私のためにデザインして作ったものを着用しています」

「次の質問です。花村さん、あなたはこのメールに記載されているような行為、すなわち会社の名誉を損なう行為を行っていますか？」


絶望的な表情で雅を見つめ、小さく頭を振りながら視線をそらし、少し俯いて答える。


「一切していません」

「ではお姉さんは今、日本にいらっしゃいますか？　できれば、今日こちらに来ていただけますか？ 今、ここで電話をお願いします」


美愛は小さなため息をつき、震える手でケータイのボタンを押した。


「もしもーし、美愛ちゃん？」

「……」

「美愛ちゃん、どうしたの？　大丈夫？」

「Ich habe eine Bitte: Könntest du zu meiner Firma kommen?/お願いがあるの、私の会社まで来てくれるかな？」


電話を終えた美愛は、雅を見ずに弱々しく伝える。


「6時前には来られるそうです……他に何かありますか？」


録音機能を停止した雅は、首を振る。


「ありがとう、花村さん……」


雅がまだ言いかけようとしたが、やるせない思いを抱えた美愛は、素早く一礼して社長室を後にした。