お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

きらびやかなミッドタウンの中心地よりも、庶民的な商店街の方が落ち着く。なぜか下町の実家を思い出させる。

『喫茶Bon』は確か午後7時まで営業しているはずだ。

ドアを開け、一番奥の商店街が見える窓際のテーブル席に腰掛けた。運よく、お客は私だけだった。

注文した紅茶が届き、カップを両手で包み込む。いつも一人の時に話し相手になってくれるママさんは何かを感じ取ったらしく、そっと私を一人にしてくれた。

指先から全身に、紅茶の温かさがゆっくりと広がっていく。


なんでこんなに胸が締め付けられているのだろう。あの社内メールのせい? それだけじゃないよね。

何がショックで、悲しくて、辛かったのか。洋服の件で圭衣ちゃんに迷惑をかけたこと? それもあるけど、一番の原因は?

あぁ、そうか……社長ではなく、雅さんから言われた質問の言葉だったんだ。まるで取り調べのようで、私が悪いみたいで。まさかあんなことを彼に聞かれるとは思ってもみなかった。

今まで見たことのない彼の表情と冷たい声を思い出すだけで、あの時と同じように胃が冷たくなり、呼吸が浅くなっているのがわかる。

商店街を行き交う人々が、涙で次第にぼやけてくる。


でも、どうしてこんなに悲しいの。
雅さんが私のことを信じていないからかな。

同居して1ヶ月が経ったのに、良好な関係だと思っていたのは私だけだったみたい。少しずつお互いのことを理解し合えてきたと感じていたのに。

今思い浮かぶのは、一緒に楽しく料理をしたり、笑い合って過ごした日々のことだ。

このまま同居を続ける? 

もう終わりかな。

いやだな、終わっちゃうの。

もっと一緒にいたいな。