お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

彼女のアパートの部屋にはあまり物がなく、シンプルでありながら温かみが感じられた。


「荷物はあまり多くないと思います……キッチン用品以外は」


3時には新しい彼女の部屋の荷物の整理も終わってしまったが、やはり細々としたキッチン用品が多い。

俺が持っていないミキサーだけでも二種類ある。一つはジュースを作る際によく見かけるもので、もう一つはさまざまな付属品が付いている。

俺が興味深く見ていると、彼女がクスッと笑いながら説明してくれた。

へぇ〜、そうなんだ。これは主にケーキを作るときに使うミキサーで、これを使えばパスタも作れると……えっ、美愛ちゃんはパスタも作れるの?

他にも、さまざまなケーキやパンの型、ホームベーカリー、電気圧力鍋、さらにはたこ焼きも作れるホットプレートなどもある。

コーヒーメーカーと炊飯器しかなかったスカスカの俺のキッチンパントリーが、徐々に埋まっていく。

こう見ると生活感が溢れ出てくるが、それが嫌ではなく、むしろ温かい我が家だと感じさせてくれる。





夕食にはまだ早い時間だったので、俺たちは車でサクラスクエア内のモールに食器類を買いに行った。

引越し業者が誤って箱を落としてしまい、ほとんどの食器が割れてしまったのだ。

それに、俺も皿が一枚とマグカップが一つしか持っていないので、この機会に新しい食器を揃えることにする。ジャム用のガラス瓶セットも忘れない。

その後、蕎麦屋で引越しそばを食べ、大型スーパーで食材を購入して帰宅した。





俺と美愛ちゃんは、お互いが過ごしやすくなるように、いくつかのルールを決めていく。

その中には『名前で呼び合い、敬語をやめる』も含まれる。家の中でも、社長と呼ばれるのは避けたい。