お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

箱を開けて一粒取り出し、泣いている彼女の口の中へと入れた。なんだか雛鳥に餌を与えているみたいで、かわいい。


「……っ、うーん、美味しい。これ、Meuh(ムー)のキャラメルだ」

「えっ、これ食べたことあるの? 日本じゃ売っていないんだけど」

「箱に赤いベルを付けた牛さんいるの」

「そうそう、これ、美味しいんだよね。あっ、これをあげるよ」


Meuh販売100周年を記念した、特別なキーホルダー。期間限定でキャラメルの箱の中に入っている。

その小さな赤いベルと牛のチャームが付いたキーホルダーを、彼女の小さな手のひらに乗せた。


「特別なおまけみたいだね。はい、どうぞ」

「うわー、お兄ちゃん、ありがとう! ミャーこれ大事ね。あのね、お兄ちゃんは王子さま?」


満面の笑みを俺に向けた彼女の頬には、エクボができている。


「えっ、僕? どうかな? ミャーちゃんは僕を王子様だと思ってくれる?」

「うん、王子様!」

「僕が王子様なら、ミャーちゃんはとても可愛いお姫様だね。」


そう言って俺は彼女の頭を優しく撫でた。


「ミャーはお兄ちゃんのお姫様なの? じゃあ、大きくなったら迎えに来てくれる? お兄ちゃんのお嫁さんにしてくれる?」


こんな小さな子にでも好意を寄せられるのは、嬉しいことだ。家柄に関係なく、俺自身を見てくれる無垢な心。


「あはは〜、うん、いいよ。大きくなったらね!」


そして、俺の小指と彼女の細く小さな小指を絡めて、約束の指切りをした。


「あのね、お兄ちゃんもお菓子やケーキが好きなの?」

「うん、僕もお菓子とケーキが好きだよ」


美しい瞳を輝かせながら、彼女は嬉しそうに言った。