お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

アパートにはすでに涼介たちが先についていた。俺たちは静かに一階の奥にある彼女の部屋へ向かう。

鍵を差し込みドアを開けた瞬間、隣人のドアも開いた。くすんだ金髪でタバコを咥えた、いかにも軽薄そうな男がニヤけながら出てきた。

その瞬間、警護の一人がヤツのドアを押さえ、涼介が彼に書類を渡して警告をする。俺たちは引越し業者と共に、美愛ちゃんの部屋に入る。

彼女は貴重品と古いノート数冊を手提げ袋に入れ、両耳に赤いリボンをつけ、首輪には白く比較的大きな骨の形をしたタグが付いた黒いプードルのぬいぐるみを小脇に抱えていた。

楽々パックなので、荷造りからすべて業者が行い、必要ないものはリサイクルショップで買い取ってくれる。





彼女と駐車場に戻ると、みんなが俺たちを待っていた。

涼介から隣人との話し合いについて聞いたところ、彼女に二度と関わらないという念書も書かせたそうだ。


「これでヤツからの嫌がらせを受けることはないと思う。もしどこかで会っても、花村さんには近づかないはずだ。念書のコピーは後日持参するから」


美愛ちゃんはホッとした様子で、笑顔に戻った。


「涼介先生、本当にありがとうございます。あの、弁護士費用を含む今日のすべての請求を私に送って……」

「ああ、それは気にしないで。昨夜、君のお父さんと話をしたから」


実は昨日、美愛ちゃんの実家でジョセフさんと二人で話す機会があった。

その際、今日の引っ越し代や弁護士料について尋ねられ、俺の方で用意すると言ったが、ジョセフさんは自分の娘のことなので、父親としてこれをやりたいと言ってくれたので、涼介の電話番号を教えた。

なんと、涼介とジョセフさんは以前から面識があり、涼介の父、伊集院圭介おじさんはHope Medical Japanの顧問弁護士でもある。

はじめから涼介は、今回の弁護士料は請求せず、引越し業者と警護代のみを請求するつもりだったと言う。