お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「しかし、美愛はまだ22歳」


当然のことだ、溺愛している愛娘が突然男と同居するなんて、許せないのだろう。ここでも両親の意見が食い違っている。『まだ22歳』と『もう22歳』

そして母親の衝撃的な発言。


「まあ、あなたはお忘れ? 美愛ちゃんはもう22歳。​それに、22歳の医学生だった私に、有無を言わせず同棲に持ち込んだことは?」


えっ、これを俺が聞いちゃってもいいのかよ?

ふと隣の美愛ちゃんを見ると、彼女は目を見開き驚いて固まっている。ここからは母親の独壇場で、焦って反撃を試みる父親を見事に撃退した。


「ひどいわ、私のことを軽んじていたのね? 娘は大切だけど、私はそうではなかったのね?」

「ち、違う、違う! 私がこんなにもずっと君を愛していることがわからないのか?」


父親は隣の母親を強く抱きしめた。母親は抱きしめられながら俺たちに向かって微笑み、指でオーケーサインを送る。

うちの両親もいまだに仲が良いが、彼女の両親はその何十倍も仲が良い。

この時俺はこの家族を上手くまとめ、初めに味方につけるべき人物がこの母親であることに気づいた。





無事に両親からの許しを得て、夕飯をご馳走になる。

彼女の両親と話せば話すほど、美愛ちゃんがいかに大切に愛されて育ったのかがわかる。

両親に彼女の仕事ぶり、特に彼女のおかげで諦めかけていた契約が取れた話をすると、父親は目を細めて嬉しそうに頷いていた。

母親からはお姉さんたちのことを教えてもらう。性格は美愛ちゃんとは正反対で、お姉さんたちはどちらかと言うと母親の外見と行動力、父親の身長と頭脳を受け継いでいるそうだ。

二人ともかなりのシスコンらしい。そして、ビジネスの拠点を東京に移すことについても話してくれた。

この時、二番目のお姉さんが養女であることを教えてもらった。年齢は美愛ちゃんと10ヶ月違いの同学年。見た目は圭衣ちゃんと久美子さんに似ており、身長は165センチあるため、ジョセフさんに似ている。

血のつながりはないが、大切な家族の一員と言っている。美愛ちゃんとは双子のようだと教えてくれた。

この家族はうちと同じように、食べることが大好きなようだ。意外にも彼女の父親も甘いものが好きで、俺たちは楽しく会話を交わした。



美愛ちゃんは今夜、実家に泊まることになり、明日の朝、車で迎えに行き、彼女のアパートへ向かうことにした。

帰り際、母親にそっと言われたことが気にかかる。


「やはり、あなたとはまたご縁があったのですね。どうぞ、美愛をよろしくお願いします」