お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「大丈夫だよ、花村さん。ご両親に挨拶に伺いたいから。できればこれから。」


とにかく、彼女とご両親にも安心してもらわないと。





東京下町、国内外からの観光客が多く訪れる土地。大きな提灯の下をくぐると、お寺へ続く参道がある。少し右横へ行くと川があり、橋の向こうには今や東京でも有名なタワーが大きく見える。

彼女の実家は、お寺から車で3分もかからない住宅地にあり、歩いても10分ほどだろうか?

彼女の母親のクリニックの裏側が自宅らしい。ここで代々医師であった曽祖父と祖父が診療所を開いていた。引退した祖父から受け継いだ診療所をレディースクリニックとして開業。

彼女が日本の大学に通うことをきっかけに、父親がHope Medical Japanの社長に就任、家族でここに戻った。アメリカで起業している二人の姉たち以外は。

裏の自宅も少し手を加え、モダンな和風の家に仕上げた。

残念ながら、彼女の祖父は、彼女たち家族が戻った一年後に亡くなったと、車の中で彼女が教えてくれた。





クリニックの裏に回り、門扉の隣にある2台分の車庫の空いている右側に駐車させてもらう。門扉を開けると、飛び石が緩やかにカーブを描いている。

両脇にはそれほど高さのない薄紫の花を咲かせる木々と、地面を覆う緑が広がっている。これはイチゴの一種で、5月から7月にかけて収穫できるそうだ。その中には、昔からある大きなユズの木とイチジクの木がひときわ目を引く。庭を進むと、自宅が見えてきた。玄関の近くには色とりどりのバラが植えられている。

美愛ちゃんはすりガラスの引き戸を開けるのをためらっているようで、微かに手が震えている。


「美愛ちゃん、俺が話すから心配しないで」


不安そうな表情を浮かべている彼女の背中に、優しく手を添えた。