お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

9月の初めから、五人の部長の秘書を務めていた元原夕太と野近千保には、新しく設立された情報システム部で、セキュリティー対策、システム開発、及びメンテナンスサーバーの構築を担当してもらっている。

花村さんが俺の秘書になってから、もう数ヶ月が経つ。

その間に滞っていた契約が結ばれ、今は俺のもう一つの夢であるカフェ BON BONを実現するために動き出した。

店舗の場所や内装はほぼ決まったが、スイーツメニュー、ロゴマーク、紙カップの取引先はまだ決まっていない。

それと並行して、多く残っている在庫の活用法も考えなければならない。これらはまだ一般社員には極秘だが。





季節の変わり目のせいか、最近体調がイマイチ。疲れが取れず、どんどん溜まっていく一方だ。

カフェ BON BONのオープンに向けて、全力で進まなければならないのに。

1日24時間では足りず、1分1秒が惜しい。



最近、よく大和がよく食事に誘ってくれる。

そういえば、やたらとエナジードリンクやコーヒーを飲んでいるな。

家政婦として来てくれていたおばあちゃんが高齢のため辞めてから、食事が疎かになっている。

昨日、久しぶりに一日中オフィスで過ごしたが、お昼に花村さんがためらいながらサンドイッチと甘酒を渡してくれた。


「もしよろしければ……」


久しぶりの食事を遠慮なくいただく。

飲む点滴と呼ばれているこの甘酒は、麹だけで作られたもので、確かサクラスクエアにあるスーパー伊乃国屋で売っているものだ。

サンドイッチはきっと彼女の手作りだろう。千切りキャベツとササミの照り焼きサンド、ツナサンド、野菜サンドもある。

以前彼女が作ったドイツのパイのようなものも美味しかったが、このサンドイッチもうまい。特に照り焼きサンドは格別である。

仕事をしながらの昼食なので、サンドイッチは簡単に手でつまめるため、とても嬉しい。きっと忙しい俺の体調を気遣ってくれたのだろう。