お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

あっ、誰かが泣いている……

たまたま一人で下校している途中、小さな公園を通り抜けようとしたときだった。

ベンチの前で、小さな女の子が泣いているのが目に入った。年齢は5歳か6歳くらいだろうか。

面倒なことには関わりたくない。

そう思い、知らないふりをして通り過ぎようとした。

その瞬間--
その子と目が合った。

ハッと息をのんだ。

光の加減で色が変わる瞳。

透き通るように白い肌。

背中まで届く、ゆるやかなウェーブの柔らかそうな髪。夕日に照らされて、まるで金色に輝いている。

もしこの世に天使や妖精がいるのだとしたら、きっと彼女のことを言うのだろう。どこかこの世のものとは思えない、不思議な美しさだった。

『かわいい』でも、『キレイ』でもない。
ただ一言--『美しい』

そう表現するしかなかった。

その子が泣いている姿を見ると、胸の奥が妙にざわついた。

守ってあげたい。

そんな庇護欲が、強く掻き立てられる。気づけば、俺は声をかけていた。


「どうしたの? ケガでもしているの?」

「……っ、と、父さまと母さまと姉さまがいないの--I want my daddy. I wanna go home」


弱々しく震える声。

日本語と英語の両方が分かるらしい。どうやら、家族と離れてしまったようだ。


「ねぇ、可愛いお姫様。君の名前は?」

「ミャー」

「えっ、猫?」


思わず笑いそうになる。


「とりあえず、今からお巡りさんに電話して助けてもらおう」


今日は金曜日。しかも秋祭りの初日だ。警察が到着するまで10分ほどかかるらしい。

泣き止ませたい。でも、どうすればいいのか分からない。とりあえず気をそらすしかないと思い、思いつくまま質問を続けた。

それでも、なかなか泣き止まない。


「好きな食べ物は?」

「……お、お菓子。ケーキ」


やっと、答えてくれた。

その瞬間、カバンの中にあるものを思い出す。父からもらったお土産。丸い箱に牛の絵が描かれた、フランスのキャラメルだ。


「これはね、僕が一番好きなキャラメルなんだ。一緒に食べよう」