お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「俺もジャムを食べてみたいな。せっかくだから、いただこうよ?」


ああ、雅さん、あなたは甘い!
こんなことをしたら、これから母さまにいいように使われることになるから、父さまのように。

私はドヤ顔の母さまと、少し離れたところで肩を震わせて笑いを堪えている父さまを恨めしそうに見つめ、首を横に振った。

よかったわねぇ、父さま。
あなたに仲間ができて!





どうにか自宅を出発し、私のアパートに到着した。

もう涼介先生、引越し業者と護衛の方々が私たちを駐車場で待っている。

部屋に行く前に、警護の方から言われた。


「何があっても、ヤツが出てきても、とにかくあなたは立ち止まらずに、部屋の中へ入ってください。あとは私たちと伊集院先生にお任せください」


どんなに静かに歩いても、隣人は必ず現れる。まるで私の行動を逐一見ているかのように。



カギを開けて中に入る前に、やはり隣人が出てきた。雅さんが私と隣のドアの間に立ってくれたので、なんとか落ち着くことができ、無事に部屋の中へ。

ここに着く前に言われた通り、貴重品とノンナ(イタリア語でおばあちゃん)からの2冊のノートを手さげ袋に入れる。

このノートは、父さまの母、つまり私のイタリア人のおばあちゃまのレシピノートで、母さまから私に受け継がれた。このレシピを使って作るラビオリは最高!

そして、黒いプードルのぬいぐるみを小脇に抱えた私と雅さんは、駐車場へ戻った。

涼介先生が駐車場で私たちを待っていた。先生から隣人の誓約書について聞いて、ほっとする。

今日かかった費用について尋ねたところ、なんとすでに父さまと話がついているようだ。

父さま、さっきは悪態をついてすまなかった。I love you , dad!

弁護士料を免除してくださった先生にお礼を申し出たところ、奥様が甘いものがお好きだと伺い、私がスイーツを作ってお渡しすることに決まった。