お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「ただいま」


勇気を出して声を上げると、玄関に小走りで向かってくる母さま。


「あら〜、待ってたわよ。いらっしゃい。どうぞ、どうぞ」


居間に通され、社長の雅さんと並んで座る。


私が話す前に雅さんが挨拶をし、ここに来る前にホテル9(クー)で購入した父さまの大好きなフルーツロールケーキを差し出す。


「初めまして」


雅さんが挨拶をすると、なぜか母さまが『あれ?』という表情を一瞬見せたが、その時は気に留めなかった。


「株式会社BON BONの社長、西園寺雅と申します。急なお願いにもかかわらず、お時間をいただき、誠にありがとうございます」


雅さんはこの1カ月間、私のアパートでの出来事を説明しながら、同居の意向を伝える。


父さまは眉間にシワを寄せて腕を組みながら聞いている......。これは機嫌が悪いな。

反対に母さまはニコニコと笑顔を浮かべている。これは絶対に勘違いしている、同棲と。

母さま、私と雅さんは社員と社長の関係なんだよ! きっと母さまは、私に初めて彼氏ができたと思っている。

ち、ちがーう!


「そしてこちらが、弁護士の伊集院涼介の立会のもとで作成した契約書です。もちろん、お二人が安心できるのであれば、私の身辺調査を行っていただいても構いません。美愛さんの部屋は、内側から鍵をかけることができます。ご家族の皆様をいつでも歓迎いたしますので、ぜひ遊びにいらしてください」

「よかったわねぇ〜、こんな素敵な方なら私も安心。美愛ちゃんももう22歳で成人だし、親が口を出する事じゃないもの」


母さまのハイテンションはまだ続いている。


「状況は理解しました。これでは娘にとってのメリットだけのようですが、この同居によるあなたのメリットは何ですか?」


ここで初めて口を開いた父さまは、日本語も流暢に話す。