お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

「た、ただいま……」


勇気を出して声を上げると、廊下から母さまが小走りで駆け寄ってきた。


「あら〜、待ってたわよ。いらっしゃい。どうぞ、どうぞ」


居間に通され、雅さんと並んで座る。私が話す前に雅さんが挨拶を始めた。


「初めまして」


雅さんがそう言うと、母さまが「あれ?」という表情を一瞬見せた。その時は、気に留めなかったけど。


「株式会社『Bon Bon』の社長、西園寺雅と申します」


ここに来る前にホテル『9(クー)』で購入した父さまの大好きなフルーツロールケーキを差し出す。


「急なお願いにもかかわらず、お時間をいただき、誠にありがとうございます」


雅さんはこの1ヶ月間のアパートでの出来事を説明しながら、同居の意向を伝えた。

父さまは眉間に皺を寄せ、腕を組みながら聞いている。

--これは機嫌が悪い。

反対に母さまはニコニコと笑顔を浮かべている。

--これは絶対に同棲と勘違いしている。

母さま、私と雅さんは社員と社長の関係なんだよ! きっと母さまは、私に初めて彼氏ができたと思っているんだ。

ち、ちがーう!


「弁護士の伊集院涼介の立会いのもとで作成した契約書です」


父さまは、受け取った書類に目を落とした。


「もちろん、お二人が安心できるのであれば、私の身辺調査を行っていただいても構いません」

雅さんは、部屋の内側から鍵をかけることができることも、忘れずに伝えた。


「ご家族の皆様をいつでも歓迎いたしますので、ぜひ遊びにいらしてください」


最後は、会社でよく見る『営業スマイル』と共に締め括った。

--さすが、西園寺社長!


「よかったわねぇ、こんな素敵な方なら私も安心。美愛ちゃんももう22歳で成人だし、親が口を出すことじゃないもの」


母さまのハイテンションはまだ続いている。


「状況は理解しました」


ここで初めて口を開いた父さまは、日本語も流暢に話す。


「これでは娘にとってのメリットだけのようですが、この同居によるあなたのメリットは何ですか?」


鋭い視線で雅さんを見つめる父さま。思わず、ピクッと肩が跳ねた。