お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

美愛ちゃんを送り届けた後、自宅のマンションに戻った。部屋に行く前に、マンションの10階にある『バーVIP』に立ち寄る。

このバーは、マンションオーナーである九条仁が、慶智の王子たちとその家族のみが利用するために開いた。

カウンターのバーテンダーにドイツの白ビールを注文し、夜景が楽しめるテーブル席に座る。

サクラスクエアから徒歩約15分の場所に位置するこのマンションからの夜景は、まるで暗い夜の海に色とりどりの宝石が浮かんでいるかのようだ。

しばらくしてビールが届き、喉を潤す。

俺は、この1週間の慌ただしさを振り返っていた。



慶智の王子たちの緊急ミーティングで聞いた、取引先銀行の支店長の娘に関する悪評と、その支店の顧客離れについて。

俺たちの会社は皆、この支店と取引を行っている。その上、支店長の娘は俺の会社の社員でもある。

彼女の勤怠についても問題があるようだ。態度は以前から問題視されており、証拠を集めようとしてもなかなかうまくいっていなかった。

とりあえず俺たちは、この佐藤親子と銀行支店に関する情報の共有について、協力し、佐藤家および銀行との関係を断つことで意見が一致した。

会社では、南ドイツの企業との契約がなかなか進展しない。

昨年この地を訪れた際、偶然見つけた地元の小さなスイーツ店。ここで食べた『Schatz』という一口サイズのお菓子が気に入り、交渉を続けている。

他の会社に比べて、連絡手段が電話かファックスのみであるため、交渉にかかる時間は通常の倍以上かかり、手書きのファックスは読みづらく、非常に不便。