お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

美愛はお兄ちゃんと出会った日を思い出し、微笑んだ。


「へー、かなり思い入れがあるんだね。俺もこのキャラメルがきっかけである子と出会い、将来は輸入菓子の会社を作ると決めたんだ。もうかれこれ15年以上前のことだけれどね」

「雅さんは、十代の頃からきちんと将来のことを考えていたんですね。すごいなぁ」


自分の十代の頃と比べると、しっかりしている雅に感心させられる。


「なんだか照れくさいなぁ。美愛ちゃんにはどんな思い出があるの?」

「ある人からもらったあのキャラメルによって、悲しかった状況からなぐさめられたような感覚です。元気をもらった気がします。安心するんです、精神安定剤みたいに。だから、今でも辛い時や悲しい時には、特にその人がそばにいてくれるように感じるから。
このキャラメルには癒される感じです」

「そうだったんだ。確かにこのキャラメルは、ほっこりとした気分にさせてくれるよね。ところで、美愛ちゃんが小さい頃の夢は何だったの?」

「……」

「えっ、なになに?」

「お、お菓子屋さんでした」

「そうなんだ、叶ったね!」

「えっ?」


美愛は不思議そうな表情で雅を見つめている。


「視点を少し変えれば、うちの会社もお菓子屋さんだろう? だから、美愛ちゃんの夢も叶ったことになる」


確かに雅の言う通り、Bon Bonもお菓子屋さんだ。


「そう……ですね。でも、私一人でお菓子屋さんになっても意味がないから」


悲しそうにつぶやく美愛の言葉を雅は聞き逃さなかった。その訳を知りたかったが、彼女の悲しげな横顔を見て言葉を飲み込む。なぜだか、聞いてはいけない気がしたからだ。

その時、二人はお互いのことを思い出していたことを、まだ気づいていなかった。