ピピピピピーー
けたたましい音のアラームが鳴り響き、私は夢から目を覚ました。カーテンの隙間から、黄色がかった淡紅色の光が差し込んでいる。
アラームを止め、ベッドの上で大きく伸びをしゆっくりと起き上がった。カーテンと窓を開け、6月の晴れた朝の空気を肺いっぱいに吸い込む。
不意に、長めのネックレスに付いている赤いベルと牛のチャームを握りしめた。
あの時にもらったキーホルダーが壊れてしまったため、赤いベルと牛のチャームを長めのチェーンに付けてネックレスにし、肌身離さず持ち歩いている。
またあの夢を見た。
夢と言っても、私が実際に体験したこと。
同じ夢を繰り返し見るのに、次第にお兄ちゃんの顔がぼやけてきている。
ただ、はっきり覚えているのは、彼の左目尻にホクロがあったことだけ。
あのお兄ちゃんはまだ私のことを覚えているだろうか、私が大きくなった時の約束を?
私は今でも、あの時の約束を待っている。
今の小学生だって王子様やお姫様が物語の中だけの存在であることを知っているだろう。20歳を過ぎた大人がまだそれを信じていると知られたら、笑われるのは分かっている。
でもあのお兄ちゃんは私の初恋の人で王子様。
私、花村美愛22歳で、今年の3月に大学を卒業し、自宅で翻訳の仕事をしている。
大学のみんなが就職活動で忙しい時、私は幼い頃の叶えられない約束を夢見ていた。
周りの友人たちは次々と内定をもらっていく中で、一人だけ焦りを感じ、打算的に数社を受けたものの、どこからも内定をもらえず、惨めな思いをした。
「焦る必要はないよ」
「ゆっくり探せばいい」
「うちの会社で働いてみない?」
「人と比べる必要はないよ」
「美愛は美愛のままでいいんだよ」
家族がそう言ってくれるたびに、何の取り柄もない自分が嫌になってしまう。
私の父、ジョセフはドイツ系アメリカ人で、友人と共に医療機器の会社、Hope Medical を立ち上げた。
幼い頃から私たち家族は日本、ヨーロッパ、アメリカを転々とする生活を送り、姉たちと私は高校生になると長期の夏休みや冬のウインターブレイクの間、毎年父の会社でインターンとして働いてた。
父は頭の良い姉たちに経営のことも教えていたらしいが、私は......主に父のスケジュール管理や来客対応、会議の準備、及び資料作成を行っていた。
私の大学入学に伴い、父がHope Medical Japanの社長に就任し、両親と共に日本に移った。
けたたましい音のアラームが鳴り響き、私は夢から目を覚ました。カーテンの隙間から、黄色がかった淡紅色の光が差し込んでいる。
アラームを止め、ベッドの上で大きく伸びをしゆっくりと起き上がった。カーテンと窓を開け、6月の晴れた朝の空気を肺いっぱいに吸い込む。
不意に、長めのネックレスに付いている赤いベルと牛のチャームを握りしめた。
あの時にもらったキーホルダーが壊れてしまったため、赤いベルと牛のチャームを長めのチェーンに付けてネックレスにし、肌身離さず持ち歩いている。
またあの夢を見た。
夢と言っても、私が実際に体験したこと。
同じ夢を繰り返し見るのに、次第にお兄ちゃんの顔がぼやけてきている。
ただ、はっきり覚えているのは、彼の左目尻にホクロがあったことだけ。
あのお兄ちゃんはまだ私のことを覚えているだろうか、私が大きくなった時の約束を?
私は今でも、あの時の約束を待っている。
今の小学生だって王子様やお姫様が物語の中だけの存在であることを知っているだろう。20歳を過ぎた大人がまだそれを信じていると知られたら、笑われるのは分かっている。
でもあのお兄ちゃんは私の初恋の人で王子様。
私、花村美愛22歳で、今年の3月に大学を卒業し、自宅で翻訳の仕事をしている。
大学のみんなが就職活動で忙しい時、私は幼い頃の叶えられない約束を夢見ていた。
周りの友人たちは次々と内定をもらっていく中で、一人だけ焦りを感じ、打算的に数社を受けたものの、どこからも内定をもらえず、惨めな思いをした。
「焦る必要はないよ」
「ゆっくり探せばいい」
「うちの会社で働いてみない?」
「人と比べる必要はないよ」
「美愛は美愛のままでいいんだよ」
家族がそう言ってくれるたびに、何の取り柄もない自分が嫌になってしまう。
私の父、ジョセフはドイツ系アメリカ人で、友人と共に医療機器の会社、Hope Medical を立ち上げた。
幼い頃から私たち家族は日本、ヨーロッパ、アメリカを転々とする生活を送り、姉たちと私は高校生になると長期の夏休みや冬のウインターブレイクの間、毎年父の会社でインターンとして働いてた。
父は頭の良い姉たちに経営のことも教えていたらしいが、私は......主に父のスケジュール管理や来客対応、会議の準備、及び資料作成を行っていた。
私の大学入学に伴い、父がHope Medical Japanの社長に就任し、両親と共に日本に移った。



