お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

オフィスビルの反対側に『ホテル9(クー)』がある。車で3分もかからない距離だ。

45階にあるティールーム『BONHEUR(幸せ)』は、開放感あふれる空間になっている。

あまり高くないレモンやオレンジの木々。
そして、ジャスミンのブーケ。

それはまるで、室内庭園のようだった。

いつも通り角の個室に案内され、何度も訪れている俺が、さっと説明する。

基本的に、個室にはワゴンで全種類のケーキが運ばれてくる。その後は、このタブレットで他のメニューも注文できると。


「花村さん、何飲む?」

「紅茶にします。社長はいかがですか?」

「俺も紅茶にする。あっ、でも最後の締めはコーヒーがおすすめだよ。ここのコーヒーは美味しいし、デカフェもあるからね」


この個室は、2面が大きな窓になっている。窓の外には一面に広がるミッドタウン。梅雨の合間の雲ひとつない青空。そこを飛行機が横切っていった。


「あっ、社長、飛行機が来ました!」


軽く身を乗り出し、弾む声で空を指す花村さん。その無防備な仕草に、思わずかわいいと感じてしまった。

彼女の仕事ぶりは的確だ。余計なことはしない。どこか遠慮がちな空気をまとってはいるが、萎縮というほどではない。自分から踏み込まないだけだ。

それなのに、さっきのエレベーターの時といい、今の飛行機といい。

彼女の目は素直に喜びで輝いている。オフィスでは見たことのない一面だった。


「本当だ。雲ひとつない青空は気持ちいいね」


しかし、仕事から解放された後も肩書きでよばれるのは……


「あのさ、『社長』って呼ぶのはやめよう? なんだか落ち着かないんだよね」

「わ、わかりました、西園寺さん」


渋った顔をしながら腕を組んでみせる。可愛らしい彼女を少し困らせてみたい。イタズラ心がむくむくと持ち上がった。


「うーん、それも嫌だなぁ。却下!」

「へっ? で、では……」


役職名も苗字も却下され、彼女はしばらく考え込んだ。