お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「嫌な思いをさせてすまなかった。こちらから注意書を送り彼女とミーティングをするから。彼女は以前から問題があり、こちらも証拠を集めている段階で、まだ十分には集まっていないんだ。もし佐藤に何かされたり、言われた場合は、できるだけ証拠を残して私に知らせてくれ。どんな小さなことでも。いいかい?」

「わかりました」


美愛は小声でうなずく。


「よし、また明日よろしく。今日は残業させてしまって悪かった」

「いいえ、とんでもありません。それでは、失礼いたします」


美愛がドアを閉めたのを確認すると、雅は先ほど送られてきた音声を聞き、深いため息をついた。

(ひどいとは聞いていたが、ここまでとは……)

弁護士の涼介からメールが届いていた。

『これは証拠として使える。
もう少し証拠を集めれば、解雇することができるから』



取引先銀行の支店長から頭を下げられた、いわゆるコネ入社の佐藤。特に目立った資格もなく、雑用として総務に配属されたが、与えられた仕事をほとんどせず、気の弱い後輩に押し付けていた。

昨年、新卒で入社した女子社員に対して影で嫌がらせをしていたらしく、その女子社員は退職した。

しかし、十分な証拠を集めることができず、今に至っている。

(もううちで3年も預かっているのだから、十分だろう。とにかくこの状況を改善する必要がある。佐藤はこの会社の毒だ。早く辞めさせなければならない。それと、花村さん……今日で2日目だが、彼女との仕事はとてもやりやすい。余計な心配をせずに自分の仕事に集中でき、彼女のさりげない気配りもありがたい。なぜだろう、さっき彼女の顔が曇り、うつむいているのを見たとき、胸が締め付けられるような気持ちになった)


雅は机の引き出しを開け、丸い箱の中からキャラメルを一粒取り出して口に入れた。